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D.C.Ⅱ.S.S第二話「想いと過去と」

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D.C.Ⅱ.S.S第二話「想いと過去と」

…最初は本当に些細な事だった…

…桜が枯れなければ名前を覚えていてもらえる…

…姿形が何年経っても変わらなければ…

…再会した時でもすぐに自分と分かってもらえる…

…それはあまりに子どもじみた願い…

…叶うべくもない少女の幼すぎる夢…

…けれど…それが…それこそが…

…全ての過ちの…”はじまり”だった…



------------- 早朝 桜公園 芳乃さくら ---------------


桜が咲き乱れている…

ボクは、初音島で一番広大な公園である

桜公園に来ていた…

目的の場所はこの公園の一番奥にある桜の木…

この公園全体に咲き乱れる桜の中でも

ひときわ大きな大木…「枯れない桜」の母体樹である。

この樹を介して島中の「枯れない桜」を制御する…

それ自体はこの桜を再生させたボクにとって

それほど難しい作業というわけじゃない。

…問題は制御する対象…つまり負の感情のほうにある。

桜に流れ込んでくる嫉妬や憎悪といった感情は

それを選別するボクにも容赦なく襲いかかって来るからだ…。

「う…」

ひときわ強力な思念をどうにか抑えつけたところで

「枯れない桜」が放つ波動が弱まった…

「とりあえずは大丈夫…だけど…」

だんだん制御が難しくなって来ている…

確実に近づいて来ている限界…それは抗い難い現実…

「でも…ボクに諦めるなんて選択肢は…ないんだ…だから…」

続けるしかない…いや絶対に続けなければならない…

この「枯れない桜」に込められた願いは

絶対にかなえ続けられなければならない願い…

ボクの理想の子ども…その存在自体がかかっているのだから…



----------- 風見学園 学園長室 --------------------------


とりあえず必要な作業を終えたボクは桜公園を後にして

夜の明けきらない時間帯、風見学園の学園長室へと来ていた。

…本来ならセキュリティにひっかかって入れないのだが

学園長の資格を持つボクは生体認証さえ受ければ

24時間出入りが可能になっている。

…まぁ、他の方法でもボクの力なら

イロイロな入り方ができるのだが

それは警備の人に迷惑がかかるので止めておく。

「あんあん!」
園長室の戸を開けるとと同時に響く甲高い鳴き声。
それとともにちっちゃなイヌのような生物がボクを出迎えた。

「おはよー。はりまおー。」
ボクはそのまるっこい愛玩犬型の生物に挨拶を交わして
フツーの学園長室にはあるまじきコタツテーブル、
そしてその上にばら撒かれた書類の束を見渡す。

「これを今から朝礼までには整理しておかないと…」

ボクは意を決してその作業にとりかかることにした…
だが敷きコタツというのはこういった作業の時は
逆に命とりになるものだ…桜の制御に力を
使いすぎたせいだろうか、足をコタツ布団入れたところで
途端に、ボクは耐え難い強烈な睡魔に襲われた…

「…う、これはちょっと…まずいかも…」

なんとか起きあがって…などと考えているうちにも

睡眠時間の足りていなかったカラダは限界を迎え…

…気付けばボクの意識は眠りの中に…

…セピア色の過去の夢の中へと落ちていった…



---------「Dream~夢の中の過去~」 桜内義之------------ 


カタカタカタ… カタカタカタ…
機械的なタイピング音…
そして小さく流れる陽気なDJのトーク…

そこは見慣れない研究室のような部屋…

あぁ、また他人の夢を俺は見せられてるのか…

少し憂鬱な気分になりながらも、生まれてこのかた
見続けてきたものでもあり、もう慣れきった状況に諦観する。

そうして目を閉じて見る夢の中でさらに目をつむるということもできず、

俺はなかば強制的にその夢の続きを見せられていった…




「…この手紙…そっかぁ。二人に子どもができたんだね。」

どこかで聞いたような声、かなりクリアーに聞こえる…
ということは、自分に近しい存在の夢なのだろうか…

少なくともセピア色に広がる心象風景から
これが夢の主にとって過去の追体験であり、
また寂しい記憶の追憶なのだと俺に直感させた…

「これで二人もパパとママか…。
 自分と好きな人との間に
 子どもが生まれるのってどんな感じなのかな?」

…手紙をしばし眺めながら思案にふける夢の主…。
しかし淡い疑問符を伴って発された言葉はどこか悲しげで…。


……

「っと、返事、書かなきゃ…」
小柄な夢の主はようやく物思いから復帰して
返信用の手紙を取り出した…
しかしそこで彼女の手は止まってしまった。

「…なんて…書き出したら…いいんだろう?」
あれこれ思案はしているようだが
どうにも思考がまとまらないようだ…

「…おかしいよね。二人の間に子どもが生まれて
 パパとママになったのって、すごく嬉しいことなのに…」

「なんだか心から『おめでとう』って
 思ってないみたいだよ、ボク………。」
それから彼女は自分の頭をポカリとたたいて
気合を入れなおした。

「ダメだよ。二人をちゃんと祝福しないと…。
 二人のことを羨ましいとか思ったりしちゃいけないんだから…。」
そう言って精一杯の笑顔を取り繕って筆を取ろうとする夢の主…。

…でもそこから流れ込んでくる感情は…

手紙の二人を素直に祝福できない羨望と、
それを感じてしまう自身への悔しさ、罪悪感…
そして…一人っきりで取り残されるという孤独感、寂寥感…

…強く…耐え難いほどに強く胸を締め付けてくる…

…それは罪の意識とない交ぜにあふれる哀しみの波長…

「う…」

俺はその強すぎる心の波長に
体を押し戻されるような感覚に見舞われた…

そうして次第にラジオの音声の方が強くなりホワイトアウトしていく視界…

友達に彼氏を寝取られて悔しいだという投稿に
他の女に手を出した彼の方は責めないのかなどと
騒がしく応じるラジオの声…しかしそれすらも雑音のように遠ざかり…

「あぁ、朝になるのか…」

…俺の意識は覚醒した…。



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テーマ : D.C.?S.S. ~ダ・カーポ? セカンドシーズン~ - ジャンル : アニメ・コミック

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