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D.C.Ⅱ.S.S第三話「造りモノと願いと…」

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第3話「造りモノと願いと…」

…そして少女の時間は止まった…

…それは覚醒…

…魔法の桜と連動した早過ぎる目覚め…

…未熟な心、未熟なカラダ…

…でもそこに宿る早熟したチカラ…

…不用意に近づく全てを傷つけ…

…少女を孤独にする神の視えざる手…

…だから彼女は演じるしかなかった…

…何の願いも疑いも持たない…

…ただひたすらに無邪気な…

…”永遠の子ども”としての自分を…




---------風見学園 学園長室 芳乃さくら---------

「あんあん」
耳の横で聞こえる甲高い鳴き声。
その高音を脳が耳障りな信号として
捉え、だんだんと意識が戻ってくる。

「…あ、ボク寝ちゃってたんだ…」

倦怠感の残る体を無理やり起こして時計を見る…
幸い朝礼まではまだ少しだけ時間があった。
「…良かったぁ。最悪の事態は避けたみたいだね…。」

いや、書類整理自体はまったくもって終わってはいないのだが。
その厳しい現実からは目を背けつつ、
とりあえず目を覚ますために窓を開け放って外の景色を見る。

そこには遅刻間近の時間に早足で登校してくる学園生たちの姿。
いつ見ても活気に満ち溢れた光景…。

そして、そこに走り込んでくる一つの人影。
桜内義之の姿が見えた。

「あー、義之くんったらあんなに慌てて~。
 あの寝坊癖は一体だれに似たのかなぁ?」

そう言いながらもボクの脳裏には短い間だったけど
大好きだった人と一緒に通っていた時の思い出がよみがえる。

それがどれだけ貴重な時間だったか…
今はもう戻らない時間に胸が締め付けられる…。

「…そうだよ、こんな日をいつまでも続ける…
 一度決めたからには…続けなくちゃいけないんだ…。」





--------- 朝の登校風景 桜内義之 ---------------------------

…『やばい、遅刻ギリギリだ』…

昨日はだれかさんの灰色な夢を見てしまったせいか
起きたらばっちり遅刻寸前の時間帯になっていた…

『でもこの時間ならまだなんとか…』

…そうして息を切らせながら校門へと走り込む…その瞬間だった。

目の前をもの凄い勢いで車が走り抜ける。

一瞬遅れで襲ってくる風圧

車影は全くスピード落とすことなく進み…

行く手にあるのは学校の正門…

…そして驚きの顔で振り返る生徒たちの姿…!

『やば…』

浮かんだのは最悪の光景

けど俺が思わず目をつむろうとした

まさにそのとき…

ギンッ!

一瞬、形容し難い感覚が

俺の全身を伝い、そのまま空間全体を貫いた。

そして…

まるで時間が止まったかのように

車は制止していた

…が、その直後

瞬く間に世界は再開された。

キィイイイッ! ゴッ!

耳障りな制動音、それに続く鈍い衝突音とともに

門柱へとぶつかって車は急停止した。

車のボンネットはへしゃげたがエアバッグ機構に守られた
ドライバーは無事、どうやら最悪の事態だけは逃れたようだ。

「…助かったぁ。…これって運がよかった…のか?」

だが口から出たその言葉とは裏腹、目の前で起きた出来事に俺は
言いようのない不自然さ、フツウではありえない「違和感」を覚えていた…。

-------- 学園長室 芳乃さくら ------------

『危ない!』

義之くんの目の前に凄い勢いで飛び出してくる車。
それに気付いたボクは、手近な桜の枝に触れてなりふり構わず力を発現させた。

すんでのところで黒い波動に支配されていた車をボクの力の制御下に置く。
同時に強い邪気に中てられて錯乱しているドライバーの意識を回復。
『ブレーキ、急いで!』
思念を送って半強制的にブレーキを踏ませる。同時に内蔵AIの電子制御も取り戻した車は
すぐさま運転席と電柱との距離を割り出して衝突時の力のベクトルがもっとも
運転席側に伝わりにくい形、つまり助手席側の前方ボンネット部が電柱に当たるように
ハンドルを自動で切らせて衝撃時にエアバッグを高速展開。
その後、周囲の車及び交通管制のAIに事故情報を転送、近くの車に減速・停止を命じて
駆けつける救急及び警察のために自己の位置情報の発信をはじめた。

本来の電子制御さえ取り戻せば50年前とは比べ物にならない安全性を誇るのが
現代の車という乗り物である。ひとまずは安心な状態にまで回復した
事故現場を見届けてからボクは安堵のため息をついた…。

「…危なかったぁ。最新の相対距離把握と自律制動が可能なヴィークルですらこうなるんだ…」
一歩間違えれば大惨事だった…。いや本来、衝突事故など構造上起こせない
車での事故だけに世間がこのニュースを疑問視するのは目に見えていた…。

「やっぱり、もう限界なのかな…」
否応無く突きつけられた現実…
既に「枯れない桜」は暴走を始めている。
人々の不純な願い…黒い欲望を吸収して
不幸をもたらす存在へと変質しつつあるのだ…。

「分かってる、これは…ボクが悪いんだ…」
なぜならこの問題の解決策は簡単。
悪意の流入を除去しきれないのであれば
ただ「枯れない桜」を枯らせてしまえば良い。

でも…それは同時に…
ボクの叶えた夢の終わりをも意味する。

ボクのコドモ…その存在の消滅を…

でもこのままの状態を続けていては
さらに危険な事態が発生する可能性は高い。
そうなれば先ほどのような事故や災害によって
間接的にあの子をを失うことにもなりかねない。
いや、それはもはやボクの造られた子ども一人の命だけで
済むような規模の災害ではないだろう。
無数の黒い感情を集約して生み出される災害が
一体どれ程の規模の被害を引き起こすのか…
カケラも想像したくない光景であることは確かだ…。

「このままじゃ…いけない。」
焦りを覚えたボクはすぐにその足を学園の外、
明け方訪れた”あの場所”へと急がせた。

全ての元凶…「枯れない桜」のもとへと…。




------ 風見学園 HR 桜内義之 ------

「え、音姉がいない?」
朝の事故の話題でざわつく教室に入った
俺に不穏な知らせを運んできたのは
自称非公式新聞部部長、悪友の杉並だった。

「まぁ落ち着け桜内。どうにも最近の生徒会長殿は挙動不審
 だったので調べていたのだが…今回の欠席に関して学校側には
 何の連絡も入っていない…どうやら無断欠席ということらしい。」

「嘘だろ…、そんな音姉が無断欠席って…」

最近考え事をしていて心ここにあらずという様子の多かったのは
記憶にあるがまさか学校を無断で休むなどあの品行方正な姉には
絶対ありえない事態だ…。

「今回の件に関してはあの生徒会会長の右腕である高坂まゆきですら
 詳細は知らないということだった…つまり朝倉姉の行動は生徒会とは
 関係ないところで動いているようなのだが…」

呆然と杉並の言葉を聞いていた俺は、途端にイヤな胸騒ぎを覚えた。
さっきも奇妙な事件が目の前で起きたばかりなのに…
内心のモヤモヤは次第に『音姉の身に何かあったのでは』という
疑心暗鬼にとって変わってきた…。居てもたってもいられなくなった俺は…
すぐさま携帯に電話をかける…

音姉…すぐ出てくれ…頼む…!
内心で強く願いながら発信音を聞く。

ツーツーツー、ガチャッ。

「音姉ぇ…!」

だがその返事を期待したコールに返されたのは
相手の着信不能を知らせる無機的な音声だった…

『ただいまおかけになった電話番号は携帯電話の電源が入っていないか…』

ピっ

すぐに電子音とともにその耳障りな音声を遮断した。
そして…

「杉並…来て早々だけど…」
言葉を濁しながらも既に決心は着いていた。
そんな様子の俺を見て杉並は…
「フ、お前の行動は分かりやすいな、行って来い、My同志…さ・く・ら・い。」
…と不適に笑って教室の戸までの道を空けた。
「すまん…」
それだけ言って走り出す俺。
「あ、義之、こんな時間に一体どこに?」
戸を開けてすぐの廊下にいたのはもう一人の悪友、板橋渉。
けど今の俺の視界にその姿は映っていない…

「悪りぃ、早退ってコトで説明ヨロシク。」

「え、ちょ、待…!」

俺は自分の用件だけ一方的に伝えて
唐突な依頼に呆然としている渉を置き去りにした…。

「あぁ~、もう、この、後の面倒は見とくから見返り用意しとけよな、義之ィ!」

…不満は漏らしながらもこちらの頼みは
聞き届けてくれたらしい友の声を背後に
俺は朝礼間近の校舎を玄関口へと走り抜けた…。


------- 「枯れない桜」  芳乃さくら -----------

…はぁ、はぁ。息を切らしながらも
ボクは急いで「枯れない桜」の元…
普通の人間には立ち入れない
「魔法の領域」まで戻ってきた。

けれどそこには一人の先客が居た。
流れるように美しい長髪と大きなリボン…
その特徴的な容姿からボクはすぐに
相手が誰だか見当をつけることができた…

「音姫ちゃん…」
そう、そこにあったのは朝倉姉妹の姉、朝倉音姫の姿だった…。

「やっぱり、さくらさん…だったんですね。」

こちらに振り返りながら言葉を返す音姫ちゃん…
その表情は何かの痛みを堪えているかの様に
悲痛なものだった…。

「調べていて分かったんです。
 この枯れない桜がいつの頃から
 あったのか…。古くは50年以上前から存在して…。」
 
「でもそれは一度枯れていて
 再び咲くようになったのは
 10年と少し前…さくらさんがアメリカから戻ってきてから…。」

「そして私のお母さんが入院生活をするようになってからです…。
 さくらさん、その頃一体…何があったのかご存知ありませんか?」

やはり彼女はもう感づいているようだ…
ボクと…枯れない桜の関係に…。

「うん…、知っているよ。」
だからボクは正直に答えることにした。
「現し世は夢、夜の夢こそ真…」

「…それって…!」
半ば予想はしていた…けれど信じられない…
いや信じたくない…という表情…
その様子を見やりながらボクは言葉を続けた…

「この木は人々の夢を吸い上げ、願いを現実にする魔法の木なんだ…。
 この木に願えばフツウは実現不可能な夢も簡単に叶ってしまう…。」
 
「けどこの魔法の木…枯れない桜にはある致命的な欠陥があったんだ…。」

「ある致命的な欠陥…もしかしてそれが今起きている
 不可解な事件や事故の要因…なんですか…?」

ボクの言葉に推論を述べる音姫ちゃん…
さすが稀代の大魔法使いであった母の血を
受け継いだというだけのことはある…。
おそらくもう彼女の頭の中でも
おおよその結論は出ているのだろう。
だからボクも逃げずにその質問に答えた。

「うん…、この桜の欠陥はね…人々の心無い悪意や欲望まで
 吸収して成長してしまったことなんだ…
 本来は穢れない純粋な願いのみを 叶えるはずの存在が
 嫉妬や憎しみ…負の感情に起因する願いまでも叶え始めてしまっている…。」

「そんな…!だったら今すぐ桜を枯らせてしまえば
 良いじゃないですか。何故そうしないんですか…?」

枯れない桜、その誕生の裏にある願いを知らない彼女は
当然のごとく枯らせば良いと言う選択肢を提示してきた…だから…。

「…ダメなんだ。この桜は枯らせない…。」

意を決したボクは残酷な現実を告げる…

「だってこの桜の魔法が…ボクの願いを叶えて…
 義之くん…桜内義之の命を…この世に造り出したんだから…。」

「…っ!?…そんな…それじゃあ…桜を枯らせば弟くんも…」
衝撃の事実に言葉を失う彼女…。

そう、これは二者択一の選択肢…。
『義之くん』と『初音島の人々に降りかかる災厄』
桜を枯らせば義之くんを…
桜を枯らさなければ枯れない桜の暴走…
結果訪れる人々の妬み、憎しみの感情の具現化…破滅のはじまり…

「一体…どうしたら良いんですか…?」

呆然と聞いてくる音姫ちゃん。
彼女の中では母から受け継いだ
正義の魔法使いとしての使命感と
幼い頃から姉弟同然に育ってきた
義之くんの命とが天秤にかけられているのだ。

…純粋に一緒にいた時間では
彼女のほうがボクより長いのだ…

おそらく義之くんへの彼女の愛情は…。

それを考えればどれほど辛い選択肢か…。
今にも泣き崩れてしまいそうな様子を
見ればその心情は痛いほど伝わってくる…

だからボクはこれまでずっと胸のうちに
秘めていた「もう一つの解決策」を提示した。

「実はもう一つだけ解決策があるんだ…」

「…!?」
ボクの言葉に目を見張る音姫ちゃん。
彼女に対してボクはゆっくり答えた。

「それはね…ボク自身がこの枯れない桜と一つになること。
 この枯れない桜の中に思念体として存在して…ボクが夢の選別者になる…。」

「そんな…でもその方法だと…さくらさんは…」

こちらを見る音姫ちゃんの表情が再び暗く沈む…。
ボクが提案したこの方法に伴う犠牲に気が付いたから…。

「…うん、ボクのカラダは消滅するだろうね…」

「…さくらさんは…それで…良いんですか?」
ボクの言葉に対して何かを押し殺すように
声を発してくる少女…。きっと誰も失わなくて良い
方法をなんとかして探し当てたい…。
そう思っているのだろう…。
そんな音姫ちゃんの優しさに感謝しながらボクは答えた。

「良いんだよ、もうこのくらいしか義之くんが居るセカイを
 維持する方法が思いつかない…それに、これは全部ボクの責任だから。」

「分かり…ました。」
その言葉に対し言外にいろんなものを飲み込みながらも
彼女は了承の言葉を口にしてくれた…。

…だからボクもその気持ちにこたえる…
それしか過ちを償う方法は無いんだ…
自分にそう言い聞かせて…

ボクは決意を固めた。





--------- 桜並木 桜内義之 ---------

はぁ…はぁ…音姉…どこだ、どこにいるんだ。
俺は息を切らせながら桜並木を駆け抜ける。

何のアテもなく勢いだけで飛び出してしまったことに
今更ながらに気付く…
でも早鐘のように鳴る心臓が俺に立ち止まることを許してくれない

だから走る、走る。

理由はない、けれど桜の密度が高いその空間の奥に

音姉がいる。そう感じる…。

「音姉…待ってろ…今…」

焦る気持ちを口にして姉の名を呼んだ…

そうして桜公園の入り口に差し掛かったその時だった。

走り続けたせいで新しい酸素を求めた肺が

密度の高い桜の空気を吸い込んで脈動する…

…瞬間…

ドクンッ!

異様な感覚が心臓、いや体全体を貫いた。

「何だ…何が…起きて…」

あまりの衝撃に目の前がチカチカと明滅する。

直後、一瞬だけ黒い花びらが目の前を横切った気がした…

そして、それと同時に体からも力が抜けていく…。

「…く…こんな…ところで…」

襲ってきた突然の事態。本能的な恐怖から必死にもがこうとするカラダ…

けれどそれすらも許されぬ刹那のうちに俺の意識は一面の白に塗り潰された…


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テーマ : D.C.?S.S. ~ダ・カーポ? セカンドシーズン~ - ジャンル : アニメ・コミック

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