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D.C.Ⅱ.S.S第四話「嘘と別れと」

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第4話「嘘と別れと」

誰とも深くは関わらない、いや、本質的に関われない

”子ども”の殻を被った少女はほぼ全ての時間を

ひとりぼっちで過ごした。彼女と友達になれるのは

不条理な存在である自分を否定してくれる条理

”科学”という名の知識の神だけだった。

けれど、どれだけ嘘をついて演じ続けても否定できない

感情が少女にはあった。それが何なのか。

その答えは案外に早く、少女を置き去りに思春期を迎えていく

同年代の少年、少女たちによって示された。

だから50年前のあの日、少女は決意した。

それだけが自分を囲う”永遠”という名の檻を壊す

唯一の方法だと信じて。

…けれど…そんな少女に対し…

…運命は…どこまでも…残酷だった…。



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「…ん。…さん!」
…誰かの呼ぶ声が聞こえる。

「…う。」

寝ぼけた頭を振って俺はなんとか意識を覚醒させる。
次第に像を結んでくる視界の中、
目の前に浮かんできたのは心配げな表情の少女…
朝倉姉妹の妹、朝倉由夢だった。

「ゆ、由夢、どうしてここに…?」

まだ思考がまとまらない俺は呆けたまま言葉を返した。

「それはこっちのセリフです。学校を体調不良で早退した
 はずの兄さんがなんでこんなところで倒れてるんですか?」

こちらの呈した疑問に心配して損したとばかりに
機嫌を損ねた由夢を見て、ようやく事の次第がつかめてきた…。

どうやら渉たちは体調不良を早退理由にしてくれたらしい。
ただまさか実際にこう体調を崩して倒れてしまったのは情けない話だが…。

「ごめん。公園まで来たら突然めまいがして気がついたら…」

「言い訳は聞きません。なんで早退したのにまっすぐ帰ってないんですか?
 病人は病人らしく家で寝てなきゃダメです。」

俺の言葉を無視して半ば強引に腕を引っ張って来る彼女。

「…参ったな…。」

今の彼女に何を言ってもダメだろう。
とりあえずここは大人しく従っておくことにした。
「よっ。」

由夢の手を借りてなんとか
公園のベンチから起き上がった俺は一番の気がかりを口にした。

「なぁ、由夢。今日音姉見なかったか?」

「え、さぁ…起きたらもう家を出てたから…って、お姉ちゃんがどうかしたの?」

「うん…、どうやら学校、連絡も無しに休んだみたいなんだ…しかも携帯も通じなかった…。」

「ウソ…。そんな…お姉ちゃんが無断欠席なんて…。」
こちらの言葉に今朝方の俺同様、信じられないという顔になった由夢…。
慌てて携帯電話をコールするがやはり音信不通なようだ…。
シュンとした様子で携帯をしまった由夢は取り繕うように話しかけてきた。
「と、とにかく一旦家に帰ろ?…もしかしたらお姉ちゃんも戻ってるかもしれないし。」

「…そうだな。こう手がかりが何も無いんじゃどうしようもない…。」
言い知れない不安はあるが正直、現状を打破できる方法も思いつかない。
俺はしぶしぶと由夢の提案に同意して家路へと急ぐことにした…。


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肩を落として家に戻って来た俺と由夢だが
朝倉邸の前に二人の人影を見つけてハッとなった。
その人影の片方がさっきまで探していた音姉だったからだ。
そして、その隣に居るのは姉妹の祖父、純一さんだ…。

「良かった…お姉ちゃん、無事だったんだ。」

「…みたいだな。」
由夢の安堵の言葉にも、言い知れぬ不安を拭いきれない
俺の返事はあくまで硬いものになってしまった。

近づいてくる人の気配を察して
音姉と純一さんもこちらに気付いたようだ。

直後、音姉は純一さんに一礼して家の中へ。
それを見た俺は慌ててその背中を追った。

「音姉ぇ!」

だが追いすがろうとした俺の前に純一さんが
自然な身のこなしで割り込んできた。

「おいおい、何をそんなに慌てる?」

「だって音姉が…!」

「ふむ、朝、起きたら苦しそうにしていたから病院に連れて行ったんだが…。」
慌てた口調のこちらに対して
純一さんのペースはいつもどおり冷静だった。

「え、病院って大丈夫なのか?」

「何ぁに、心配いらん。ちょっとばかしタチの悪い
 風邪を患った程度さ。 病院で治療を受けたらすぐ良くなったよ。」

「そっか。それじゃあ携帯がつながらなかったのは…」

「病院内で鳴られたらかなわないんでな、電源を切っておいた。」

「でもそれならどうしてすぐに学校のほうに連絡しなかったんです?」
当然の疑問を口にする。純一さんの言葉が本当なら
他に朝方で欠席理由が分からない理由が無いからだ。

「ん、おかしいな。さくら…や、学園長先生には連絡しておいたんだが…。」

「あ、そうか。さくらさんに直接…それで朝方は連絡が職員までいってなくて…か。」

とりあえず純一さんの言うところに矛盾はない。
でもさっきの音姉の様子はやっぱり気にかかる…

「義之君、そう深刻にかまえなくても良いんじゃないか?」
考え込んでいる俺に純一さんは気さくな笑顔で応じてきた。

「君が暗い顔をしてたらうちの孫もすぐ暗ーい顔し始めるんだからさ。」
そう言って純一さんは俺の後ろに向かって目配せした。

「え、あの、その私は…。そんなことは…」
純一さんの指摘どおり珍しく神妙な面持ちで
押し黙っていた由夢が突然のフリに困惑した様子で返事してくる。

「ま、そんなわけで今日のところは帰った、帰った。
 風邪がうつるといけないし義之君も今日はうちには来ないこと。分かったね。」

「じゃ、じゃあ、兄さん、お大事に。」

「お、おう。由夢こそ風邪引かないように気をつけろよ。」
一抹の不安はあったがこの場は他に選択肢も無さそうだ。
仕方なく俺はそのまま家路についたのだった。


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○芳乃邸 芳乃さくら ○

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夜もふけた時間…学園で必要最低限の書類整理を終えたボクは
自分の家に帰ってきていた。まだ部屋の明かりが点いているところを見ると
義之君も起きているのだろう。

「…この家ともこれでお別れだね…」
感慨深くため息をつきながら
居間に置手紙を遺した後、
ボクはなるたけそーっと
戸をひいて廊下を渡り玄関へと向かった。

そうして明かりを点けてない
薄暗い玄関に一歩足を踏み入れた

その瞬間だった…
「さくらさん?」

「え?」
不意にかけられた声に思わず漏れる驚きの声。
そして声のしたほうに視線も向けるとそこには…

お風呂上がりなのだろう…石鹸のいい香りを纏い
タオルを頭にのせて、こちらを見下ろす義之君の姿があった。


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「どうしたんです。こんな時間に?」

…なんだかいつになくぼーっとした様子で
こちらを見上げているさくらさん。

ちょっと驚いている感じだったその目が
不意に伏せられた、その次の瞬間…

「えいっ」
軽い掛け声。

「えっ?」

同時に肩にかかる軽い衝撃。
気がつくと俺はさくらさんに抱きつかれていた。

「さ、さくらさん?」
あまりの事態に固まりかけた俺だが身長差のせいで
ぶら下がるような形になってしまったさくらさんを慌てて抱き止める。

「あ、あのこれは…」
唐突な行動に戸惑いの色を示すも
さくらさんからの返事はない…



…いや、今、微かだが何か言うのが聞こえた。

なんといったのか確かめようと
俺はその小さな声を頭の中でゆっくりと再生し直す。

『ごめんなさい…』

確かにそう聞こえた。
けれどどうしてそんな言葉を…
しかし疑問に思うより先に
さくらさんが更に強くぎゅっとしがみついて来た。
…流石にここで何か問い詰めるのは
あまりに無粋な気がする…
またしても固まってしまった俺は
身動きできず流れていく時間と、
さくらさんの肌のぬくもりを感じていた…。


……
………
そして、永いようで計れば数瞬の時間が過ぎて…

ふーっと加わっていた力が緩む。

「充電完了♪」
しゅたっと目の目に着地した

さくらさんの表情は…

笑顔だった。

そして…

「それじゃあ、おやすみなさい。」

発された明るくいつもどおりの言葉。

その言葉を残してさくらさんは俺の目の前からいなくなった。


…だから…それがまさか最後の別れの挨拶だった
なんてその時の俺には気付けるはずもなかった…。


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テーマ : D.C.?S.S. ~ダ・カーポ? セカンドシーズン~ - ジャンル : アニメ・コミック

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