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D.C.Ⅱ.S.S第五話「罪と罰と」

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第5話「罪と罰と」

…島を離れてからずっと少女の時間は止まっていた…

…だから”彼”の時間も止まっているハズだった…

…けれど6年の歳月の間に”彼”の隣には”彼女”がいた…

…結局、子どものままなのは少女だけだった…

…もう近づけない距離、埋められない距離…

…少女を永遠という名の牢獄から救えるのは”彼”だけだったのに…

…その願いはもう…叶わない…

…だから少女は決意した…

…ずっと一人で生き続けることを…

…もう、夢を見るのはやめにしようと…

…そして50年前のあの日、枯れない桜は…枯れた。




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粉雪と一緒に舞う桜の花びら

その中に金色の糸が幾重にも混じり

そして舞い散る

見送るものと見送られるもの

朝倉純一と芳乃さくら

そこにあるのは二人だけの特殊で特別な関係

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「…本当にごめんなさい…」

さくらの口からこぼれた告白は
そのまま目の前の好々爺然とした男性
純一へと向けられる。

「さくら。もう…謝らなくていい。
 独りで寂しいとか、だから何かに頼りたい
 なんて思うのは人間なら当たり前のことだろう。」
そして続く言葉…
「それをわがままみたいに言うんじゃない
 それこそ誰でも願う人並みの幸せだろう。」

伝わってくる純一の優しさ
でも今のさくらにはその声が辛い…

「ううん、だとしても…それで
 何をしても良いってことにはならないよ。」

「…だから、これからその
 責任を取りに行くつもりなのか?」

「…うん、分かっちゃった?」
意外にも言葉を先取りされたことに
救われた気持ちになったさくらは少し顔をほころばせた。

「この状況で分からないなんていう鈍いヤツはいないよ」
純一はさも当然という感じで返事をしてくる。

けれどその態度に逆にさくらはムっとしてきた。
「むぅ…、昔からいつも鈍感なくせに…」

「ハハハ、そうだったか?」
かえってくるのは呑気な返事。
「昔、『果たし状』を勘違いしたのは
 いまだに覚えてるけどな、さくらんぼ。」

「…そう…だよ…。」

あまりに懐かしい響き…
思わず言葉に詰まる。

「あの時、ホントの果し合いの決闘と
 勘違いして お兄ちゃんってば
 金属バット持ってきたんだもん。
 あれはいくらなんでも鈍すぎだよー。」

そう表の顔では笑いながらもさくらの心は
当時の情景―はじまりの時―を思い出していった。


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…もう60年近く前のことなのに妙に鮮明に思い出される景色…
そうだあの時の果たし状が考えてみれば最初のラブレターだった。
あの頃から純一はだんだんと義妹の音夢ばかり気にかけるようになって
だから、だからボクは…あの時、純一に、お兄ちゃんに忘れて欲しくなくて…
遠い異国の地に旅立っても覚えていて欲しくて…

全部…子どもの頃の話だ…
…そしてボクのホントの時間は
あの時からずっと止まっている…

この外見と同じように。

…ダメだ、これ以上思い出したらボクは…

そうして黙りこくっていると

お兄ちゃんの方から呼びかけられた。

どことなく重い調子の声で…

「もう義之くんと一緒にはいてやれないのか?」

「…うん、もう時間のほうが許しくれないみたい」
現実に引き戻されたボクは現状を確認するようにつぶやいた。

「でも義之くんなら大丈夫。これからきっと
 大切なヒトと一緒になって…子どもが生まれて…
 ボクにも新しい家族ができるんだよ。
 多分それが一番、ボクにとっても大切なことだから…。」

だから後悔はしない
…きっとそこにボクはいられないだろう…それでもだ。

”未来”の為にボクは決意を口にする。

「ねぇ、お兄ちゃん…一つお願いしてもいいかな…」

「なんだい?」

「今夜ボクは枯れない桜のところへ行って来る」

ヒトのカラダを捨ててでも
枯れない桜を制御するために。

ただそれには一つ心配事があった。
だからもしもの保険をかけておく。

「けれどもしかしたら失敗してしまうかもしれない。
 だからお兄ちゃん、その時はね…」

…ボクが失敗すれば桜の暴走は止まらない。
だからボクはお兄ちゃんにもしもの時は
枯れない桜を枯らせてもらおうと考えていた。

多分、桜を枯らせるだけであれば
音姫ちゃんにもできることだろう。
でもボクが失敗した、その後に枯れない桜を枯らす、ということは
義之くんと、それと同時に桜と一体化し思念体となった
ボクの存在も完全に消し去るという行為だ。
その重た過ぎる責務を、彼女一人には背負わせられない。

…ううん、それもあるけどホントは多分…

ボクと義之くんの存在を背負えるのは
お兄ちゃんしかいないって…気付いてるからだ…

そう、ボクを、ボクの存在を消していいのは
朝倉純一…お兄ちゃんだけなんだ…

だから…
「枯れない桜を…」

けどその続きをお兄ちゃんは遮った
「さくら」

「え?」
会話の間に強い口調で割って入られ
ボクは困惑する。

「もしかしたら…なんて考えなくていい。
 どんなことがあっても後のことは何とかする。」

「それに最初から失敗なんて
 考えてちゃできるものもできないぞ。
 俺みたいな老いぼれの力なんて
 あてにならないほうがよっぽど良いんだからな。」

…ボクの言葉の真意に気付いたんだろうか…
お兄ちゃんはそっと、言葉で支えてくる。
ボクが後ろを向かないように…。

「…お兄ちゃん…」

「…もう他に頼みごとは無いか?」

「うん、もう大丈夫。どうもありがとう。」

「どういたしまして。」

そうして…どれだけしても足りない…
感謝の念を胸にしてボクは朝倉の家の門を抜けた…
もう全てを終わりにしようと自分に言い聞かせて…

…だけど…

ボクが伝えたかった言葉は
ホントはもう一つある。

でもそれはもう口にしない。

だってボクは50年前のあの日
音夢ちゃんとお兄ちゃんの結婚を
心から祝福したはずなんだから…

だからこれがボクの

声にできない最後の言葉。

…お兄ちゃんへ…
『貴方が好きでした…。』


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深々と桜が舞っていた。

驚くほどゆったりとして

まるでここが今、島中で
巻き起こっている事件の
温床とは思えないほどに。

無数の花びらが包む
夢のような静寂の世界に
ボクは足を踏み込んだ。

「幕を引きに来たよ。」

自分自身とこの世界のために…

「…きれいな姿だね…本当に。」

夜の月明かりを浴びた桜の花びらは
青みを帯びてより幻想的な光景を映し出す…。

「長い間、無理をさせてしまったね。」

「今度からは、
 ボクも手伝うことにしたよ
 …これから先、ずっと…。
 もうしばらく君には力を借りる
 ことになるから、よろしくね。」

大きな樹に近づいてそっと抱きしめる…

「君のおかげで夢を見ることができた…」

「今まで夢を見せてくれてありがとう。」
だから…

「さぁ、はじめようか― 」
一旦、樹から離れる。

これでボクが人として生きるのは最後
…怖くは無い…
いっぱい支えてきてもらったから
…悲しくも無い…
これでボクの未来の家族が笑っていられるなら
義之くんを失わなくて済むのなら

ボクは…

永遠に桜舞う季節を繰り返す。

これでいいんだ…

そう誓ってボクはそっと桜に手をかけた

入りはいつもの制御と同じ感覚

スイッチを切り替える

ボクからボクではないモノに

意識がだんだんと桜の中へ吸い込まれていく

まるで植物が大地に根を下ろすように

深層へと…

「っ!」

反射的に身がすくむ。

これ以上は危険だと。
意識が拡散して
戻ってこられなくなると
告げている。

でもここで諦めるわけにいかない。
手をこまねいていたら余計に
事態が深刻になるだけだ。

だからこんな中途半端なところで
後戻りするわけにはいかない!

もうちょっとなんだ…あと少し…

しかし目の前が突然、明滅する。

想いとはうらはらにボクの意識は
桜の中に奈落のように渦巻く
黒い波動…悪意のカタマリへと導かれていく。

聞こえる。
人の持つ醜い感情の声が…

憎い、怖い、羨ましい、恐ろしい、欲しい、滅茶苦茶にしたい
ボロボロにしたい、壊したい、破壊したい、崩したい
愛されたい、癒されたい、…だから独占したい…

それはあまりに暗い闇の呼び声
こんな意思に飲み込まれたら…
ボクは…

「…うっ」

抵抗しようと考えただけで
ズキンと痛みが走る。

そうしてボクの思念体から
だんだんと力が抜けていくのが分かる…。

だ…めなの?

「義之く…ん…」
もっと早くどうにかしておけば良かったのかな…
それともボクは最初から間違って…

ッ―

突如意識全体にホワイトアウトがかかる。
真っ白に染まる視界、そして…

ダメ…だ…
ここで諦めたら…島のみんなが…
義之く…ん…が…

そこで視界が逆に完全に暗転する。
ボクの心はそうして枯れない桜に巣食う
悪意の渦へと呑み込まれていった…。


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テーマ : D.C.?S.S. ~ダ・カーポ? セカンドシーズン~ - ジャンル : アニメ・コミック

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