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D.C.Ⅱ.S.S第6話 「ヴィーデとコーダと」

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D.C.Ⅱ.S.S第6話 「ヴィーデとコーダと」

…少女は耐え続けた…

…一人であることに…

…何日、何十日、何百日、何千日…

…そして、何万日も…

…けれど孤独という毒素はゆっくりと静かに…

…確実に少女の精神を蝕んでいく…

…そして少女は見知ってしまった…

…自分と同じ”魔法使い”である女性が故郷の地で…

…永遠という魔法を解かれ幸せになる姿を…

…何よりその女性を射止めたのは…

…大好きだった”彼”と”彼女”の子どもだったから…

…そこにあったのは”家族”の幸せ…

…永遠に子どもである少女には…

…決して手に入ることの無い無形の幸福…

…だから少女は憧れた、焦がれた、そして願ってしまった…

…自分にも”家族”が”子ども”が欲しいと…

…そしてその夜…少女の願いを受けて…

…物語は再び”はじまり”を迎えた…

…イヅレ訪レル破滅ノ時トトモニ…



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「さくら、 どうしたんだ。
 そんなとこにいないで早くこっちに来いよ。」

…声が聞こえる
なんでだろう…ボクの意識は
暗い闇の中に呑まれたはずなのに…。

声を頼りにゆっくりと意識を戻す
そして目の前に浮かぶ顔は…

「義之くん…じゃ、ない?」

目の前の居るその男の人の顔立ちは
確かに義之くんによく似ているけど
その目はいたずらっぽく
また大人びた余裕を覗かせている。

そう、その姿はまるで…若い頃の…
「あの…その…」
ボクが言葉に詰まっていると
男性の方からよって来て言葉をかけてきた。

「おいおい、どうした俺のこと忘れたのか。
 まさかそのナリで健忘症とか言わないよな?」

そう軽口をたたいて何の遠慮も無く
ボクの頭を撫で回してくる。

「わわ、何を。」
突然の行為に赤面する。
子ども扱いは嫌いだったはずなのに
なぜか不思議と怒りが湧いてこない。
むしろうれしいと感じる自分がいる。

「いつもそっちから抱きついてくるからな、お返しだよ、お・返・し。」
続く言葉も軽い。
そうだ、こんな調子で
ボクに接してくれるのは…
おおよそセカイに一人しか存在しない。

「お兄ちゃん?」

「何だ、他の誰だと思ったんだよ」

「え、でも…ボクは…」
ありえない事態に頭が混乱する。
だってボクの知るお兄ちゃんは
もう孫も十代になるおじいちゃんなのに
目の前の青年はどう見ても
20代後半がいいところだ…。

「ほら、そんなに不安がるなって。」
そう言ってさらに大胆な行動へ。
なんとお兄ちゃんは突然ボクを抱き寄せてきたのだ。

「はにゃっ!?、だ、ダメだよ。」

ボクは自分の身に起きたことが信じらず
目を白黒させてしまった。

…いや、一時はこんな幸せを確かに望んでいた。

けれどそれが叶わないからボクは…
もう一度枯れない桜を…
そう思案している最中に玄関の引き戸が引かれる音がした。
その音にお兄ちゃんも反応を示す…

「お、義之が戻ってきたぜ。」

「え?」

「ただいま、母さん。」

目の前の子は確かに
ボクが10数年前に枯れない
桜から生み出したときの
義之くんそっくりの男の子がいた…

じゃぁこの家は…
見回すと生活感のある
家具で埋まっていて気付かなかったが
どう見てもここは芳乃の家…自分の家だ…

ということはボクは
お兄ちゃんと結婚して
義之くんが子どもで…

あり得ない。
あり得なさ過ぎる。

あまりに甘ったるい空気に
違和感を覚えたボクは
この窒息しそうなほどの幸せに
溺れたくなる心をはねのけた。

そうだ、これは絶対におかしい…!
ボクは全力で残る力を振り絞った…。

消えて!

すると突然また目の前が暗転して…
耳障りな怨嗟の声が響いてくる
そして幸せな光景は
夢のように消え去った。

ボクは思念体としてのカラダの眼下に広がる
黒い欲望の肥大化した大渦を見ていた…。

「…はぁ、はぁ、ボクはあれに…呑まれて…」
魅せられた。
幸せすぎる夢を
いや、あそこまで来たら
幸せとは言わない。
むしろ穢されたくない理想を
勝手に借りこんで人の心を弄んでくる
最低の悪夢だった。

「…う、なんとかあれにだけは呑まれないようにしないと…」
けれどそれ以上、ボクの思念体のカラダは動かない。
もう時々、意識を回復するのがやっとの状態だ…
このままボクの心は完全に飲み込まれていくんだろうか…

そう弱気な思いがこみ上げてくると同時にまたボクの意識は拡散していった…。


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……

………

…再び意識が戻ったのは桜舞い散る世界…

「…ここは?」
手を広げれば月色に染まる花びら。

見上げた先には枯れない桜がある。
今ではこの桜の中に取り込まれたはずなのに。

これもまたあの暗闇が見せる夢の続きなのだろうか。
けれどなにかが違う。確証は無いけどなぜかそう感じた。

どうしてだろう…?

疑問に思っているとふと誰かの視線を感じた。
「…さくらさん?」
視線の主は義之くんだった。
驚いた表情でこちらを見ている。

そうか義之くんにも他人の夢を見る力が
あったんだよね。…お兄ちゃんと同じ…

…だってボクがそのように創ったんだから…

どうしてか理由は分からないけど
目の前にいるのは正真正銘の義之くんだ…。

「あの…さくらさん、これは夢…なんですか?」
不思議そうに聞いてくる義之くん。
その邪気の無い様子にボクは合わせる顔が無い。
音姫ちゃんにも約束したのに…
結局ボクは桜の制御に失敗したんだ。
けどそのことは
どんなに辛くても
正直に話さなきゃいけない…だから…

「うん、夢。これは…ボクの夢。」

言葉をつむぐ…

「ボクは君にね、話さなきゃならないことがあるんだ…」

「はい…」
落ち着いた様子の義之くんの返事。
それに促されるカタチでボクは言葉を続けた…

「まず…最初にごめんなさい。
 今、初音島で起こっている事件は
 全部、ボクのせいなんだ。」

「どういうことです?」

「…枯れない桜。
 昔ここにはね、本当に人の願いを叶える
 桜があったんだ。正真正銘の魔法の木。」

「人が人を大切に思う力を集めて
 困っている人の下に奇跡を起こす…。」

「そんな夢みたいな桜の木があったの。」

「でもその木は枯らされてしまった。
 ううんボクが枯らしたんだ…。」

「なぜなら致命的なバグがあったから。」
…そう、おばあちゃんの桜の木は
 ボクのどんな些細な感情にも
 反応してしまう欠陥を持っていたから…

「そもそも願えば夢が叶う世界なんて間違っているのかもしれない。」

「でも、ボクはそんな力があっても良い
 いや、その力の再現法を探るくらい良いと思ったんだ。」

「だからボクは遠い異国の地で枯れない桜の研究を続けた。
 50年前のあの日、ボクが枯らしてしまったおばあちゃんの桜は
 多分、おばあちゃんにとっても最高位の魔法だったと思う。
 それを孫であるボクが無かったことにしちゃいけないと思った。」

「魔法使いというのは元来、そういう存在だから。
 先代の魔法は正しい血脈の子孫が継承していかなきゃいけない。」

「でもそうやってボクが枯れない桜を研究しているうちに
 外ではどんどん時間が過ぎていっちゃってた。
 そしてふと寂しさばかり募らせるようになってしまったんだ。」

これ以上はいけない…でも止まらなかった…
ボクのあふれ出る感情にあわせて桜の根元に潜む
欲望の渦が胎動し地面を覆っていた桜の花びらを一斉に
舞い上がらせた…。

そうして舞い上がる桜吹雪の中、ボクの独白は続く…

「ボクの大好きだった人たちはどんどん大人になっていって
 家族を作って、そうして家族としての時間を過ごして…
 幸せになっていくのに…でもボクはずっと一人だった。
 この魔法で時を止めたカラダが…ボクを孤独にした…。」

「だからボクは十数年前のあの日、研究の末に開発した
 新しい枯れない桜のサンプルを初音島に持ち帰った。
 そうして願ってしまったんだ。ボクにも家族が欲しいです…って。」 

それはもしかしたらあったかもしれない現在の可能性。
ボクと”彼”との間に生まれたかしれない子ども…義之くん。

「じゃ、じゃあ俺の存在は…!?」

「そう、義之くんは…ボクが枯れない桜に願った…ボクの子どもなんだ。」

でもその言葉を聞いた義之くんは何か合点がいったふうな様子だった。
「やっぱり俺は…さくらさんの子どもだったんだな。」

「そう、キミは枯れない桜が起こした奇跡の産物。
 そしてこの世界には…本来存在してはならないもの…・」

「この桜の魔法が届く範囲でしか存在できない」

「そして問題はもうひとつあった。この枯れない桜には
 前のおばあちゃんが作った魔法の桜と違って
 人の負の感情に起因した願いも叶えてしまう欠陥があったんだ。」

「そう、たとえどんなに醜い願いでも無差別に…」

「最初はほんの一枝だったけどやがて地に根を張り
 どんどん大きくなっていった。今まではボクが
 なんとか制御してきたけど…今ではもう制御しきれなくて…。」

「それが次々と起こる原因不明の
 不思議な事故の引き金になっていったんだ…。」 

自分は無力だった…。
いや、欲望や羨望に拠った願いの力を
制御できるなんて思い上がりだったのだろう。
大勢の人の思いの力は
一人で制御するにはあまりに大き過ぎた。
でもこの状況を解決する方法はもう…

「ごめん…なさい。本当に…ごめんなさい。
 もうこの事態を解決するには
 桜を枯らせるしかないのに…
 でも…でも…桜を枯らせちゃったら義之くんは…」

「そうか…音姉はそれで…」
やっぱり思い当たるフシがあったのだろう。
義之くんは目を背けずこちらをじっと見据えてくる。
その眼差しに耐えられなかったのはボクのほうだ…

「…うん、音姫ちゃんもボクのところまでたどり着いたよ。
 そして今もまだきっと枯れない桜の前で悩んでると思う…。
 …ごめんなさい、ボクがこんな願いごとさえしなかれば…」

…涙が滲む…
過ちを犯してそれを償うことすらできない
…力無い自分に…

「さくらさん。」
そこで義之くんの方から声をかけてきた。
「俺は感謝してますよ…。」

「え?」
この桜吹雪の中一歩一歩近づいてくる。
その思いの強さを証明するように頑なに…

「俺は幸せでした…
 普通の人よりずっと短い時間だったかも
 しれませんけど家族や、友達や、大切な人に
 出会えて本当に良かったって思ってます。」

「俺にこんな時間を与えてくれたことに感謝してます。」
目の前に伸ばされる手。
そして…つむがれた言葉…

「だから…ありがとう、母さん。」

同時に義之くんの腕のぬくもりがボクを包んだ。

抱きしめられた瞬間

それが我慢の限界だった

目じりに溜まっていた涙が
止まり切らずあふれ出す。

「う、うぅ、義之…くん…。」

抱きしめられたままボクは泣いた…。
そんなボクに義之くんは…
フッと目を細めて…その決意を口にした。

「…さて…と、音姉一人じゃ決心
 できないだろうし…俺、もうそろそろ行かなくちゃ。」

そっとカラダを離した。

これが正真正銘のお別れだろう。

言いたいことはまだいっぱいあったけど
様々な想いを込めて…

「さよなら、義之くん…。」
ボクは最期の言葉を口にした。

それにうなずいた義之くんの姿は次第に薄れ…
その消え行く姿にボクは微笑みかけた。
キミを生み出したことを後悔させないでくれて

…ありがとう…と。


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義之くんを見送ったボクは一人、消え行くのを待つだけとなった。

どうして義之くんに会えたのかは分からないけど

これでもう思い残すことは無い…無いはずだ…

けれど実は一つだけ気がかりなことがあった。

音姫ちゃんが枯らせることになっているってことは

お兄ちゃんはどうなってしまったんだろう。

桜を枯らすことに失敗して命を落としてしまったんだろうか?

急に押し寄せる不安。

心の隙を見つけた枯れない桜の中の黒い欲望が騒ぎ始める。

それがボクの想像をさらにイヤな方向に駆り立てた。

もしお兄ちゃんがボクの為に命を落としてしまっていたら…

ボクは音夢ちゃんになんて謝ったらいいんだろう…

彼女のことを思い出しながらボクは懺悔する。

それに呼応した黒い闇がボクを一斉に覆いはじめる。

これはきっと罰なのだろう。

だが不意に別の光が枯れない桜の世界を揺らした。

それは終わりに繋がるヴェーテのサイン

そのサインを受けて物語は終局へ

最期の楽章、コーダへと入った。

「これが…枯れない桜が枯らせる音姫ちゃんの魔法…
 …なんて暖かい光…そう…だね…、もう終わりにしよう。
 君たちの醜い願いはボクの存在と一緒に消えるんだ。
 お兄ちゃんが居なくてもまだこの島には
 あの偉大な正義の魔法使いの娘がいるんだから…
 そこに義之くんが加わってできないことなんて無いんだ。 
 …だから、みんな…さぁ、終わりの笛を…ボクと鳴らそう…。」

…そうしてボクはその身を自ら闇の中へと投じた…

…全ての歪んだ欲望と自分を一緒に消し去るために…

…そう、ボクの楽章もこれで終わり…

…もう過ちも繰り返されない…

…永遠とも思えた廻る旋律も…

…音源を失えば途切れるものだ…

…だからもう…

…D.C.は響かない…



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テーマ : D.C.?S.S. ~ダ・カーポ? セカンドシーズン~ - ジャンル : アニメ・コミック

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